贋作 桜の森の満開の下
絢爛たる舞台。
冒頭、度肝を抜くのは、舞台演出の華麗さだ。
舞台全体を覆う巨大な一枚紙の絨毯を突き破って、鬼たちが姿を現す。と同時に、逆さまに舞い降りてくる桜の森。
いかに芝居を見せるか、を熟知した野田秀樹の演出がこれなのだ、と圧倒された。
そして始まる物語は、言葉が織りなすイメージの迷宮。
妻夫木聡、古田新太、天海祐希ら演者の肉体を通して実体化していく物語世界に、観客はたちまち呑み込まれていく。
中でも、深津絵里の演じる夜長姫が魅力的だ。
無垢な少女と残忍な女王が混在する、魔性のヒロインが、登場人物たちと観客を翻弄していく。
早寝姫を演じた門脇麦にはいつか、夜長姫にもチャレンジして欲しいと思った。